飛熊の家_方形屋根に守られた小さな木の家

高さをデザインすること。

2016/09/10

2次元で考える。

耐震等級3、2013年省エネ基準の長期優良住宅を住宅の基本性能とし、その性能スペック以外の部分について、楽しく暮らす、気持ちよく暮らす、永く暮らすを強く意識して設計しています。すべて快適に暮らすためのものですが、中でも特に注意を払っているのが高さについてです。

建物にはというより、3次元のすべて世界では幅と奥行きそして高さが存在します。幅と奥行き、あるいは幅と高さなど2つの方向への表現は2次元な訳です。家づくりで目にする設計図も2次元。この2次元の図面を見て、瞬間的にその空間を想像するのは一般の方には難しいでしょう。そこで登場したのが3D図面、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-10-12-51-11
こちらは、住宅のある部屋を横からぶった切ってみている図面で、断面詳細図といいます。この図面の中にこれからそれぞれの高さや、幅などの数字を追記していきます。このような図面と合わせて、間取り図(平面図と言います)があるわけですが、専門家はその2枚の2次元図面から空間を想像し、デザインしていきます。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-10-12-53-21
※3Dの構造イメージ図。住宅の骨組みを確認するのに重宝します。提供:きいぷらん

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-09-10-13-19-26
 

平面的な2次元と断面的な2次元の2つの図面を用いながら、そこに不足するもう一つの数字、奥行きとか高さなどを考え設計を進めていきます。建築士の資格を持つ人がすべてその想像ができ、うまいデザインができるかというと決してそうではありません。この世界にもやっぱり、うまい下手があるんです。

高さの感覚が明暗を分ける。

じゃ、うまい人ってどんな人でしょう?それはズバリ高さの感覚を持っている人。奥行きや幅などの感覚も大事ですが、高さの体感にてその空間の落ち着きがものすごく変わってきます。普段通い慣れている学校や職場、その空間の天井の高さって気にしたことありますか?今お住いの家の天井高さだって気になっていないかもしれません。

キャップやアウトドアでテントを張ることあると思います。最近ではタープを張って、BBQなんてのも多く見かけます。

takibi-tarp-cotton-recta_main_l
※タープイメージ、ピンタレストより

写真見てても気持ち良さが伝わってきます。この気持ち良さどこから生まれているのでしょう。もちろん静かな高原、奥に見えているのは富士山でしょうか、こんなロケーションだったら気持ちいはずですね。でもロケーションだけじゃないんです。大きく影響を与えてるのはタープの高さなんです。このタープ一番低いところはおそらく1.8mくらいでしょう、ちょっと背の高い人だと頭が当たる高さです。その低いところから、一番高いところ(おそらく2.4m)へ天井が登っていっています。

これが、1.8mのままフラットでは使いにくい、2.4mのままでは中途半端な高さで、ここまでの落ち着き感は出なかったでしょう。どこかのコマーシャルで「天井は高いほうがいい」ってありましたが、このタープなくしたらものすごい高い天井になりますが、果たしてこの気持ち良さは得られたでしょうか。

高さを抑えることで、人は安らぎや落ち着いを感じ、その空間を心地い所と認識するものです。しかも無意識のうちにです。普段歩いている街の中にも、この高さのせいで心地いお店や、そうでないお店もいっぱいあるのです。「ここ気持ちいいな」となんとなくでも感じるところがあったら、そこの空間がどんな高さで構成されているか見てみてください。ちょっと手を上に伸ばしてみれば想像つくと思います。170cmの人が手を伸ばして指先で大体210cmくらいです。この高さの感覚が、住宅の心地よさを左右するんです。

想像する空間は暮らしに繋がる。

高さの感覚が大事と言ってきました。うちで住宅を設計する場合、全体的になるべく低くデザインしています。天井の高さは2.1m〜2.2m、軒の高さを地面から2.8mくらい。この高さは庇の先端で2.2m〜2.3mくらいになります。ちょっと背の高い人が手を伸ばせば手が届く高さです、家の軒先に手が届くってちょっと不思議ですよね。でも、さっきのタープと同じ効果がある。想像できるでしょ、気持ち良さげに見えるの。

室内の天井も同じです、一見2.1mって低く感じますが、暮らしでの不便はありません。身長が2.2mオーバーの人には辛いでしょうが、1.8mの人でも頭をぶつけることはありません。普段の生活を振り返ると、座っていることの方が多くないですか?ソファに腰掛ければ目線は床から1.0m〜1.2mくらいです。2.1mの天井高さでも圧迫感はなく、かえって心地よさを覚える高さです。つまり、高さというのは普段の暮らしの中から、適当な寸法を導き出すものなのです。

広さと高さのバランスも忘れるな。

とはいうものの、何でもかんでも低くというのは無茶があるかもしれません。暮らし方だけでなく、その部屋の広さ(平面的な幅や奥行き)とのバランスを見ながら高さを設定していく必要があります。結局のところ、1/1(原寸大)の模型でもない限り、その感覚を伝えることはできません。我々専門家は、そんな空間バランスを知識と経験(建築的なものだけでなく、家事や子育てなどの普段の暮らしも含め)から想像し、快適な住空間を創造していきます。いかがでしょう、これまであまり意識されなかった高さのイメージ。少しでも気にしてもらえたら、もっと心地いい住まいを手に入れることができるはずです。

 

 

 

 

キッチンの勘所、メーカーショウルームにて。

2016/09/7

基本設計がまとまり、実施設計へと移ってきた方形屋根の家。先日は、水回りの設備機器を確認ということで、二つのメーカーショウルームへ行ってきました。震災後、来場者が多いみたいで土曜日曜はいっぱいいっぱいとのこと。平日にお休みを取っていただき、ゆっくり見てきました。

IMG_6336
タッチレス水栓。

これはうちの設計では標準的にお勧めしています。洗い物している時など、いちいち水を止めるのに蛇口を触ると、周りがべちょべちょ水浸し。特に、揚げ物や油物を触りながら、ちょっと水を出したいという時なんて、蛇口がべちょべちょのベロベロ。それが嫌でずっと出しっぱなしていう方もいるのでは?このタッチレス水栓は、そんな食事の支度のストレスを解消してくれます。

LIXIL ナビッシュ             SF-NA471SU 115,000円
LIXIL グースネック    SF-HM451SYXU  65,000円

上記の場合、約2倍の50,000円の差ですが、これは定価なので実際の取引では20,000円〜30,000円程度の差にしかなりません。先に書いた食事の仕度ストレスを解消してくれるのであれば、絶対オススメなのです。楽チンなだけでなく、水やお湯の使いすぎを抑える役目も果たしてくれるという、環境配慮型です。ちょっと贅沢と遠慮している奥さま方、全然そんなことないと思いますよ。

次はビルトインコンロ。

IHタイプかガスタイプか、使われる方々で真っ二つに別れるところです。やっぱり炎が見えた方が料理やってる感があっていい、という方や、安全で火力調整がわかりやすいIHの方がいいわ、オール電化でIHの方が家計に優しそうだから。いろいろな要素があり、悩まれる方も多いですね。そんな時「古市さんだったらどうします?」って必ず聞かれます。そこでどう答えるか、専門家としての見栄の切りどころです(笑)。そんな時はこう言います。

「僕だったら両方つけます。」

おいおいって回答ですが、意外と真面目に答えています。要は料理・用途の違いで使い分けたいということです。どちらにも得手不得手があるのは当然ですね、それなのにそれぞれを均等に比較しても答えは出ません。最終的には、家事、特に料理に対する奥さまの哲学で判断してしまえばいいのです。哲学なんて難しく書きましたが、フライパンは振り回したいとか、煮込み料理はしっかりそばで見守りながらとか、家庭の味を子供達にしっかり伝えたいとか、そんな料理に対するちょっとしたこだわり?それが使う人の哲学なんだろうと思います。意外かもしれませんが、ホテルの調理場ではIHへの移行がずいぶん進んでいます。これはプロの料理人として、美味しいものをいつも安定的にという哲学が、そこへ向かわせているのかなとも思います。

IMG_6337
グリルも、

ずいぶんすっきりしてきましたね。水を張るための受け皿がなくなっています。美味しい焼き魚もベトベトのグリル洗いは面倒なところでした。焼き魚といえば、先日こんな物を買いました。



まだ使ってみてませんが、レビューを見る限り、かなり期待できそうです。焼き魚の匂いもダイレクトに出て、今からすでに美味しい焼き魚を想像してしまいました。

収納もすごいな。

IMG_6339 IMG_6340
引き出しの前に、薄い収納が収められていました。なるほど、キッチン周りで収納しづらい細者たちが納まっています。オリジナルキッチンを作ること多いですが、これ作れなくもなさそうです。今度チャレンジしてみます。まぁ、必要ない場合は非効率な出費になるので無理には作りませんが、アイデアということで。

IMG_6343
ステンレスの天板も、一昔前のエンボス柄だけではなくなっていました。いわゆるヘアライン仕上げ、オリジナルキッチンを作る際はこの仕上げが多かったです。エンボス柄の方が傷がつきにくいという利点があるようですが、使っていくうちに傷つくのは当たり前。それより、グリグリ洗い磨きがかけられるヘアラインの方が僕はオススメです。水垢まみれのシンクなんかも、ステンレスたわしでゴシゴシやれば、ピッカピカに蘇りますから。エンボス柄は、コーティングもしてあるようなので、そんな風にゴシゴシはいけないようです。

開発者たちの・・・。

IMG_6352
引き出しも内部で数段に分けてある。メーカーの商品開発すごいな、毎日こんなアイデアをいくつもいくつも出してるんでしょうね。大半はボツになるだろうから、このショウルームで見るものは生き残ったアイデアばかり。開発者たちの日常をついつい想像してしまいました。

IMG_6353
除菌水。

という水が出てくる水栓が付いてました。こちらはTOTOのシステムキッチンです。まな板や包丁など、雑菌が残りそうなものを除菌できるとのこと。ちょっといいな、

古市:「この水栓だけ購入できますよね」

TOTOのお姉さん:「水栓だけはないんです、キッチンにセットされるもので。」

オリジナルキッチンでも使えたらと思いましたが、やっぱりダメでした(涙)。ちょっと手間かけて、ハイターの付けおきか、熱湯消毒ということでいきましょう(笑)。

写真撮ってたのキッチンばかりでした、他にもユニットバスや便器に洗面台と見てきたのですが。普段から台所に立つことが多いので、無意識に興味ある部分だけ写真撮ってたみたいです。今回の計画では、キッチンはオリジナルの予定です。今回のショウルーム見学で、いろいろな可能性が見えてきました。より快適に、より楽しく食事の支度、そしてあと片つけができるよう考えていきます。

 

 

方形屋根をもつ、心地よく快適な住まい計画の始まり。

2016/06/27

地震で遅れていた新築計画が2件、やっと動き出しました。どちらも楽しみな計画ですが、今日はこちらを紹介します。

IMG_6167
屋根が特徴的な平屋の住まいです。正方形の間取りにそのまま屋根をかぶせています。右奥に、お風呂と脱衣所、洗濯室をくっつけたとてもシンプルな形をしています。現在ご夫婦お二人ですが、建物完成の時期にはご家族が一人増えます。将来は4人家族ということを前提に計画をまとめてきました。広さは相変わらずの21.5坪ほどに納まっています。この広さが一つの基本形になりつつあります。この基本形に、家族ごとの生活スタイルとしての場(空間)をシンプルに追加していく感覚です。

敷地に対して、建物が少し振れています。建物を方角にきっちり合わせた結果の配置ですが、そのおかげで庭の使い方にも広がりが持てました。南側の庭とデッキテラス、リビングへのつながりが気持ちよさそうです。

IMG_6168
しっかりと庇に守られたデッキテラス、完全にアウトドアリビングです。とても魅力的なデッキテラスですが、利用の方法、メンテナンス方法、雨の避け方など想定して計画しないと、使いにくいもったいない存在になってしまいます。「積極的に使いたくなるような仕掛け」こういったデッキテラス成功には必要な要素です。

プレゼンテーションが4月初旬、地震をはさんで本日第一回目の間取りミーティングでした。基本的にこちらの提案を気に入っていただき、この模型にてご自身たちの暮らしを想像してもらい、ほんの少しだけ計画の見直しを進めます。いいものになりそうです。今回も長期優良住宅認定でいきますが、グリーン化事業にも参加します。性能もしっかりした素朴で、気持ちいい家。そんな素敵な家なのですが、ちょっとしたオチもあります。

長期優良住宅の条件である床面積最小制限、なんと75㎡以上なんです。小さくても快適に計画できているのに、そのせいでもうちょっと大きくしなければなりません(涙)。「必要な広さが確保された、暮らしやすい家」これが75㎡の根拠とのこと。暮らしやすさでいけば、75なくてもいけるんですがね。

何れにしても、気持ちいい住まいになりそうです。進捗はまたこちらで公開していきますのでお楽しみに。

 

 

BLOG

カテゴリー

新着記事

アーカイブ