家づくりの常識、日は東から昇り日は西へ沈む。
2016/03/1
いよいよ3月ですね、今日は天気もよくて、今月末にひかえたお花見もこんな感じだったらなぁと庭の桜の木を眺めてみました。
まだまだ、蕾はかたそうですね。
家の性能と太陽の力。
そんな庭を眺めていて、あらためてこの時期の太陽って気持ちいいなと思いました。事務所の中にも戻ってみると、太陽の光がとても暖かく、暖房機なんて必要ないって感じです。うちの事務所は納屋をリフォームしたものなので天井が低く、そのため床はコンクリート土間にカーペットを直に張っています。床下をつくると天井が低くなりすぎます。この時期それが功を奏して、コンクリート部分を暖めてくれて、程よい環境をつくってくれています。
ただ、その効果を狙って施した仕様ではないので、窓はペラッペラのアルミサッシを使っています。先行投資をケチってしまったので、あっという間に太陽から得られた気持ちいい熱が、どんどん窓から逃げていってしまいます。
日が落ちたり、曇ってしまえばあっという間に冷えちゃうんです。どこをどうすればいいか分かっているのですから、さっさと手を加えればいいのですが、これもこれで役に立ってたりするので手つかず状態です。このペラッペラのサッシが役に立つの?
お客さまに体感して頂きます、悪い例として(笑)。いいものはよそにいっぱい展示してあるし、うちで設計した住宅はもちろん高性能なものばかり。なかなか、最低レベルのものって体感できないんですよ。それをここで説明できればなと・・・。そんな風に言い訳しています(爆)。
さて、そんなありがたい太陽なのですが、その恩恵を最大限受けるためには窓や断熱や気密など、建物の性能だけを求めても効率がいいのもではありません。その建物の配置(方角的向き)が大きく影響するのです。至極当たり前のことのようですが、実際の街並をみてみると、考えられていない住宅が結構ありますし、このブログをお読みで注文住宅を建てられた方、方角のことを気にして家づくりを考えられましたか?
土地のせいにしている、あきらめている。
いやいや、うちはちゃんと考えて南向きになるように考えたよ!そんな声も聞こえてきますが、おそらくその「考えたよ」は土地を買うとき、選ぶ時のことでしょう。だから、南側道路がもてはやされ、そちらから先に売れていっちゃうんです。
なので、土地を区画整理する場合にも、南側道路の敷地がなるべく多くとれるように開発業者は考えて造成していきます。その方が売り易いですからね。土地の広告では「南側道路!」って大きく強調されてますよね。結果的に、さほど住宅を設計する時に方角を考えずとも、何となく南向きの家になっているだけです。もっと、積極的に家の配置(方角的向き)を考えることで、同じ間取りでも随分違う住まいになるはずです。土地任せでなく、どんな土地であろうと、方角のことを家とセットで考えていくことが大切なんです。南側道路ばかりを探すのではなく、土地のせいにするのでもなく、あきらめずに家の配置を考えましょう。
日当りの基本、意外と知らない北面の日射。
今朝9時くらいに、うちの事務所の庭から真西を撮影した写真です。
青空と白い雲、春の芽吹きを待つ名もない雑草たち。くぬぎの枯れ葉とのコントラストが綺麗な季節です。
こちらは同じ時間に、真東を向いて撮影しています。随分イメージ違いますよね、撮影自体は振り向いただけです。
太陽の光をどう見るか?
この2枚の写真のイメージの違いはなにか?カメラを趣味にする方なら当然のことでしょうが、太陽に向かって撮っているかどうかの違いです。東向きは朝日を向いた逆光で、西向きは朝日に背を向けた順光で撮っています。逆光と順光、光に向かっている逆光の方が明るく写りそうですが、実際はこの結果です。これは、南側と北側でも同じ現象が起こります。人の目は、光が物体にあたることで、その物体の色や明るさを認識することができます。逆光の場合、その光が人の目よりも先に物体に当たってしまい、物体の影が目に届いてしまいます。だから、東向きの写真は暗く見えちゃうんですね。さらに、光のあたる物体が多いことも影響しています(木や建物がいっぱい)。これが、水平線しか見えない海岸だったらまた違うでしょうね。
これに対して、西を向いた写真では光は背中側からあたり、人の目よりも先に物体(くぬぎの枯れ葉や雑草たち)にあたります。その光が反射してカメラの中に入ってくる。物体が光を反射しているので明るく感じる・見えるわけです。前に書いた「水平線しか見えない海岸」では逆光であってもこれと同じようになります。それは、視界の大半が海面であり、光を反射する物体だから明るく見えるはずなのです。
想像と違う、太陽の動きはこうでした。
太陽はどちらから昇ってどちらに沈みますか?素直な方は東から昇って、西に沈むと答えられるはずです。素直じゃない方は、太陽が動いてるんじゃない、地球が自転しているからそう見えるだけ。あっ、公転も関係あるけどね!なんていわれそうです。んが、ここは素直になってもらって、次の絵を見てください。
これは、うちの事務所の建物と方角を重ねあわせたものです。すでに建っていた建物なので、建物の向き自体はどうすることもできませんでした。曳家(ひきや)で移動とかもありますが、そこまで大事にする気もなかったので。
そんな絵なのですが、すでにお気づきの方もいるでしょう、この絵で注目すべきは夏至の時の日の出と日の入りです。なんかこれまで思っていた常識と違いませんか?
そう、日の出は東を大きく北側に超え、北東から出ています。同じく日の入りも北西に沈んでいます。ちなみに、常識通り東から登り西に沈むというのは春分と秋分の時です。夏至の日周辺では、いわゆる建物の北側と呼ばれる部分にも日が当たるのです。これ意外でしょ。さらに、冬至の時は日が当たる範囲が夏至の時の半分しかありません。時間も冬至で10時間、夏至で14時間と4時間も差があります、この4時間は自分の活動時間として考えると大きいですね。
方角を読むことで、住まいはGood変わる!
どうですか、今回は建物の配置が太陽の動きと光、熱と連動し、住環境にどう影響するかをちょー簡単に書いてみました。というより、その入り口程度ですね。実際設計する時には、これらはもちろん、窓から見えるあるいは見せたいものや、風の取り入れ方など複合的に整理してデザインしていきます。そんな知恵を持ってすれば、南側道路の土地に頼らずともいい家はしっかりつくれます。道路の取り付き方だけでいえば、北側道路の方がぼくは好きです。これを読んで頂き、住宅性能を十分発揮できるような家づくりを目指してください。決して土地のせいにしないでね。