住宅におすすめの浴室換気扇!オフローダーの取り扱いについて
2016/02/5
省エネ、浴室換気扇の弱点を克服!
オフローダーという優れた換気設備をご存知でしょうか?日本住環境株式会社が提供する設備というより部材ですね。詳しくは、こちらのサイトをご覧ください。
これまでの浴室換気扇は、浴室で吸い込んだ空気を換気扇本体に取り込み、そこからダクトを通って屋外へ排出、天井面についている換気扇はほとんどこのタイプです。あるいは、壁に取付けた換気扇本体でダイレクトに屋外へ排気。何れにしても、浴室の湿った空気を換気扇本体へ送っていました。換気扇の掃除をされたことある方はわかると思いますが、湿った空気が入ってくるため、ほこりも湿っており、換気扇の汚れはその性能すら邪魔するにまでになっています。浴室換気扇、掃除したことない方は一度掃除してみてください。こんなに排気できたのかビックリされるかもしれません。
理屈は簡単、なるほどねって感じです。
このオフローダー、この湿った空気を換気扇に取り込まないというのが売り、その理屈はこうです。
オフローダー製品サイトより転記
赤い→は換気扇から屋外へ排出される空気です。そして、浴室からの排気管の接続手前で、意図的に配管サイズを絞って気流を強め、その力で浴室の空気を吸い上げる。サイホン式トイレの汚物を流す構造とか、昔よく見かけていた便所の臭突、こんなの見たことありませんか。ザ・昭和ですけど。
くるくる風で回ることで、気流をつくり、その力で便槽内の臭気を排気するという、動力なしの優れものです。工場の屋根なんかにもついてましたね、でっかいやつが。
素晴らしい製品だけど、注意が必要!
そんなオフローダーですが、その設置には注意が必要です。工事段階ではなく、設計の時点で設置場所とか、ダクトのルートだとかを検討しておかないと性能を全く発揮できないことも、逆にマイナスになることもあります。ある住宅へこのオフローダーを設置しました。半年くらい経ったある日、「お風呂のカビがひどい、おかしいなと思ったら換気口から風が吹き出してるみたいです。」とのこと。すぐに見に行くと確かに排気が逆流している。本来外へ出ていくはずの排気が戻ってきている。カビの原因はこれでした。
なんでそんなことに、調査開始です。
すぐに換気扇取付け業者、販売店、わたしにて現場調査です。天井裏に入りダクトの状況や、換気扇本体廻り、屋外の吹き出し口、いろいろな可能性を探ってみました。
ファイバースコープでダクト内を点検。
いくつか原因らしきものはあったのですが、どれも決定的なものではありません。どうしても天井裏だけでは確認しづらいということで、販売店さんの倉庫にて、天井裏と同じ状況をつくって実験してみようということに。ダクトの長さや、曲がり具合なんかも再現です。
現在の状況再現、オフローダーはダクトの中間部でT字に交差している部材。
ダクトの曲がり具合を少なくすると排気できます。曲がりが多ければ抵抗が増えるので、その結果は当然といえば当然。だけど、実際の現場では曲がらないダクトではダクトの意味がありません。他に可能性はないのか?その後もいろいろ調整してみます。そしてたどり着いたのが次の写真です。
オフローダーの位置が違います。
一見先の写真とどこが違うのか分かり難いですが、オフローダーの接続位置を変えてみました。より外壁の排気口に近いところまで移動させてみました。すると、見事に浴室の空気を吸い出してくれました。やはり、ダクト内の気流に負荷が掛かっていたようです。曲がりで発生する負荷は分かり易いですが、オフローダーの接続位置から排気口までの距離が大きく影響していたようです。
取付説明書が不親切!こうなることが分かってたのか?
今回のトラブルが発生したとき、メーカーである日本住環境株式会社にも連絡し、原因調査への協力を依頼しました。施工上の問題なのか、製品上の問題なのかしっかり調べないといけません。メーカーにも来熊いただき製品の説明などをいただきましたが、結果的には製品上も、施工的にも明らかなミスはなかったが、「製品の接続位置で大きく性能に差が出る」ということが実験で分かりました。これが事前に分かっていれば、こういう問題は発生しなかったはずです。そこで、オフローダーの施工要領書を再確認してみました。
オフローダーの施工要領書
これがその要領書です。左上に取付イメージとして、外部排気口に近い位置でオフローダーが接続されています。が、あくまでイメージ。そんな印象を受けます。その下に書かれてある「ダクトの取付け勾配」のこと、「オフローダーの取付向き」についての方が、注意事項とか重要とまで書いてあるのでしっかりここは守って施工しています。
メーカーへ対応の依頼
今回のトラブルで発生した補修費(壁や天井を剥がしてまた復旧したり)のこと、それと施工要領書の記載方法などについての改善を求めました。費用負担については、設計者と販売店それとメーカーの三者での折半が妥当ではないかと提案しました。でも、メーカーとしては呑めないとのこと、担当者は申し訳なさそうでした。まぁ、メーカーとしてはそうだろうなと想像していました。金額的には大した額ではなかったのですが、全国で発生しているであろうトラブルです。複数になれば相当の負担になるはずです。ここを争っても時間が勿体ないと思ったので、費用については販売店と設計者の二者での負担を決めました。設計者であるわたしにも取付け位置の考慮が不足していたわけだし、販売店もその重要性を消費者へ伝えきれなかった点で責任があります。
問題は施工要領書の改善です。メーカーはこちらにも応じられないというのです。全国でこのオフローダーのトラブルないのか聞いてみました。すると、同じ現象が報告されているようです。で、どんな対応をとっているのか?僕らと同じようにダクトの接続位置を変えたり、天井や壁を剥いでやり変えたりしているのか?ほとんどの場合そうではないようです。ではどうやっているのか。
製品のコンセプトはなんなのか?
驚いたことに、オフローダーを取り外しているそうです。オフローダーを取り外し、お風呂からの排気ダクトを換気扇本体に接続し直しているとのこと。確かに、換気扇で強制的に吸い込むわけですから、換気としての用は十分すぎるほど足りてます。しかし、そもそもこの製品が開発されたコンセプトはなんだったのか?そう、換気扇本体へ湿った空気を入れない、換気扇への水分による負担をなくすため。全く、製品コンセプトが無視された問題解決が図られていました。これでいいのか?それしか方法がなく、やむなくそういった解決を図っているのであれば、設置前にしっかりと設置方法をメーカーとして示すべきではないか。そんな風に施工要領書の改善を求めたわけです。しかし、返事はNO!でした。
いい商品がなくなるのは勿体ない。
メーカーからの、施工要領書の改善はしないとの報告にがっかりしつつ、何とかならないものかとこんなことを伝えてみました。
「今後同じようなトラブルで困るお客さまや、販売店や設計者、それに施工業者の為に今回のトラブルの顛末をブログで公開しますよ」
今やネットの情報伝達力は侮れません。メーカーもそれはいやがるだろう、渋々でも要領書の改善に取り組んでくれるのではと期待しましたが、返事は変わりませんでした。「インターネットででもブログでも公開して頂いて構わない」とのこと。ということで、このブログにて今回の顛末を公開しています。しかし、誤解して欲しくないのは、製品や製品のコンセプトはいいものだということです。この排気逆流の問題で、この製品がなくなるのは勿体ない。今回お話しした注意点さえ気をつけて設計し、施工すれば換気扇への負担を少なくし、省エネルギーな浴室換気が実現します。
ここまで書いて思ったのですが、メーカーはわたしが製品の悪口をいわない、勝手に施工要領を解説してくれる。そんな風に思って公開を了解したのでは、強かな戦略かな?とも感じます。何れにしても、このオフローダーでの事故が一件でも未然に防げれば幸いです。