家の価格について
家の価格の構成
建物の価格はわかりにくいものです。なかにはユニットバスとか便器とか、わかりやすい項目もありますが「これが見積書です」と渡され、中身をみてもほとんどの方は理解する事は不可能でしょう。その理解が難しい理由に複雑な価格構成があります。
建物は基本的に手作りです。家を造るのに必要なものは「材料」「道具」「人」「時間」の4つです。
料理でも何でも基本的な構成はこうなっています。材料を、包丁や鍋を使って、料理人が切ったり炒めたり、必要な時間をかけてお客様のもとへ提供します。家の場合も一緒です。ただ、パーツが多いので一気にわかりにくくなっているだけです。
家の価格を分解してみる
では、見積書にでてくる価格はどうなっているのでしょうか?
先の4つの組み合わせであれば、なんとか理解も出来そうですが、そう単純ではありません。例えば、100㎡の平らな壁に色を塗るのと、同じ100㎡だけどボコボコの壁に色を塗るのとでは価格が変わってきます。何となくわかると思いますが、俗にいう手間がかかる作業なのです。同じ100㎡だから、材料は変わりません。
道具はどうでしょう、これも基本的には一緒ですね。変わるのは「人」と「時間」なのです。平らな部分を塗るより難易度が上がりますから、熟練した職人さんが必要になります。
丁稚さんが日当10,000円だとすると、熟練の職人さんは日当20,000円だったりします。人の違いで価格が変わります。
時間はどうでしょう、ここは丁稚さんだと作業が遅いので、単価の高い熟練の職人さんで時短した方が有利かもしれません。こんなことを組み合わせて建物の価格を導きだして行きます。そういった項目を集めてまとめたものが見積書なのです。一つ一つ積み上げたものなのですが、数が多いため複雑化して感じるのです。
こんな風につくられる家の値段。そうそうプロでも簡単に出す事は出来ません。どれくらいの広さで、どんな材料をつかって、どれくらいの期間を使い、どこに建てるかなど数万におよぶ部品を含め、ざっと出せるものではないのです。
坪単価の落とし穴
先にも書いた通り、広さや大きさ建てる場所に、使う素材や部品など詳細がわからないと家の値段は導きだせません。だけどそれでは時間がかかってしまい、住宅という商品を売るためには不利に働いてしまいます。作り手側の都合ですが、それが現実で、そこで登場したのが坪当たり○○万円という非常にわかりやすい(簡単という意味で)指標です。
ただこれには落とし穴があります。これまで書いた通り非常に複雑である家の値段がそうそう表せるはずもなく、ふたを開けてみれば入り口で30万円/坪だったものが、あっという間に60万円/坪になったりもします。最初の値段から倍にまでなるのですからショックですよね。広告やコマーシャルの坪単価を鵜呑みにしないで、希望するものがその中に納まるか納まらないかは、詳細が決まるまでわからないとキチンと認識しておきましょう。
それでも坪単価は使います
そんな落とし穴がある坪単価ですが、非常に簡単であっという間に家の値段を掴む事が出来ます。掴むというところが大切で、最初の予算組の時にこの簡単さが生きてきます。FAD建築事務所では、最初の住宅の規模を決める時にこの坪単価を使います。
どんな方でも家づくりの予算はお持ちです。その予算を、住宅建設費用・融資手数料や税金、引っ越し費用などの項目に振り分け、住宅建設費用として使える額を算出しそれを坪単価で割ります。そうやって建設可能な家の規模を導きだします。住宅建設費用が2,000万円の場合、坪単価80万円で25坪の住宅規模になるという事です。
坪単価の考え方
おかしな事ですが、一般に目にする坪単価には生活に必要な項目がぬけている事も多いです。流し台がなければ食事も作れないのにオプションだったりします。これは、流し台のグレードがいろいろあるので、グレードを確定するまではオプションでという理屈のようです。流し台もいろいろありますが、75万円の流し台として、25坪の広さの家であればそれだけで坪単価が3万円上がります。逆を言えば流し台を坪単価から外して広告すれば、坪単価が3万円安くなるわけです。
FAD建築事務所の場合だいたい坪単価を80万円で設定しています。かなり高価な設定にしていますが、家が出来れば住まえるようにほとんどの設備を含めています。エアコン・照明・カーテン・屋外電気や給排水工事、外構なども含めたりします。最終的には詳細な設計を済ませキチンと見積もりしないとわかりませんが、必要なものは最初から想定しておき、あとはそのグレードなどを打ち合わせの中らか絞り込んでいくようにしています。もし、想定していたグレードより上がったとしても、もともとある程度の予算は含んでいるので、その差額分が上がるというシンプルな考え方です。
バランスの良い家づくりをサポートします
坪単価30万円だったものが60万円になった。ちょっと大げさですが、これは打ち合わせを繰り返す中で、どんどん求めるものが膨らんでいく事を示しています。最初はそんなに立派でなくてもと思っていても、ショールームで横に並んでいるグレードの高いキッチンをみるとやっぱり欲しくなります。断熱のグレードも調べれば調べるほど、もっと性能のいいものでなければいけないのじゃないかと不安になったりします。その無限に膨らむ欲は、実は必要ないものもまで求めている可能性があるのです。予算、住まい方、性能、そして欲。それらのバランスをとっていく必要があるのです。そのバランスがとれれば、本当に自分たちにあった住まいがつくれるはずなのです。
家について、最初はあやふやだったイメージ、希望する設備や性能のことなど、お客さま自身私たちと打ち合わせを繰り返す間に、かなり勉強されていることになります。そんなに意識していなかったドアの枠や、床の材料など、素材の違いが生活にどう影響するかがだんだんと分かるようになってきます。
打ち合わせと言っていますが、実は家づくりの勉強なのかもしれません。そういう打ち合わせを繰り返しながら、内容を一つ一つ詰めていきます。ですから、一軒一軒家の値段は違ってくるし、それらが決まらないと値段は導きだせないのです。
自分の家を磨き上げる
勉強していく中で何がいいもので、何が劣っているものかが分かってきます。
それが分かってくれば、どうしてもいいものを選んでしまいます。結果どうなるか、そう予算オーバーになってしまうのです。
しかし、これでがっかりしないでください。ここからあなたにぴったりの家へと磨き上げていきます。予算オーバーというつらい結果でしたが、気持ちを切り替え予算に見合うように内容を吟味していきます。そうすることで、家の中身がより分かってきて、本当に自分たちに合う家を知ることが出来ます。いろいろ諦めていく作業は辛いですが、実は家を磨き上げている作業なのです。