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築50年、小さな家の実証実験。

2015/02/2


公営住宅での暮らし。

昨年の9月まで、結婚してのしばらくから約15年間、アートポリス参加の公営住宅に住んでいました。設計は坂本一成さん。公営住宅であったためか、キチンと3DKの間取りになっていました。駐輪場から4層を貫く外部吹抜けや、玄関から伸びた長い廊下、居間と食堂に繋がる6帖強のベランダ。一つ一つはあっというものばかりでしたが、それらがすごくシンプルに美しく納まっていました。強いられたデザインはなく、どれもこれもオーソドックスなものばかりです。ここでの15年間の暮らしは、ぼくの住宅に対する考え方に大きな影響を与えました。ここで長男が生まれ、4人の子供たちが成長してきました。窓がいっぱいあって掃除が大変だったり、結露に悩まされたり、なにより寒かった。しかし、それら問題を解決しながらの生活は、鉄筋コンクリートであり、街中の生活であるにもかかわらず、心地よい田舎暮らしというか豊かささえ感じていました。建築物そのもの力もあるでしょうが、それだけでなく、そこに暮らす工夫というか、そういうものとリンクすることで発揮されるた感覚だったのかもしれません。その証拠に、リンクできなかった他の住人からは酷評もいっぱいでした。

引っ越しをせまられる。

昨年になり、退去の努力をという通知が届くようになっていました。いよいよ出なければいけないかと考えてはいたのですが、次の住まいを準備しなければなりません。いよいよ新築の自邸かとも考えましたが、いまいち気持ちが乗りませんでした。持ち家に今もですがあまり興味がわかないんです。長い賃貸生活で、普通は持ち家に気持ち移りそうですが、賃貸であるからこその暮らし方への工夫、その楽しさを知ったからでしょうか。なにか、暮らしの中にも条件があって、それをクリアしていくことから、豊かさが生まれるような、そんな感覚です。家族に言ってもなかなか理解推奨はないですが、まんざらでもなくそんな暮らし方になじんでいるようです。

戸建て賃貸を借りる。そして暮らしを整理する。

そんな感じでしたから、持ち家計画は検討もせず、賃貸物件を探し出しました。やっぱり住み慣れた近所がいいのであたってみると、意外と貸家が多いことに気づかされます。ただし、長屋形式のも(広い敷地に戸建ての住宅が数棟並んでいるタイプ)が多い。あれはいけません、暮らしが内にこもってしまってせっかくの戸建てが台無しです。そんな中、元の住まいから歩いて10分、子供たちの通学路からちょっと入ったところに良物件を見つけました。普段からお付き合いしているオフィスオレンジさんからの紹介でした。戸建てで庭があって駐車場も2台分。家賃も申し分なし。早速契約して引っ越し支度です。広さこそ公営住宅より広くなりましたが、間取りはやっぱり3DK。6人家族では普通選ばれない広さと間取りです。それでも、ぼくと家内の中ではそこでの暮らしが想像できました。なかなかいいぞと。大家さんに相談して、費用ぼくら持ちでのリフォームはある程度してもいいよとの返事も頂き、早速リフォームに取りかかりました。大きく内容は3つです。

・床材の杉板化
新建材フローリングだったのでその上に杉板を張りました。タタミは撤去で杉板厚板に

・居間、子供部屋には紙障子を設置
障子用の木枠から準備してきちんと取り付け

・壁をセルフビルドで色の塗り替え
子供たちが楽しみながら大活躍

この三つだけで、間取りの変更は一切なし。元々の間取りと、僕らの家族構成がぴったりとはまり、想像通りの住まいに変身しました。これが中古住宅での購入であれば断熱リフォームをやるところですが、さすがにそれはやめておきました。そんな簡単リフォームでの生活が始まりました。

小さな家間取りとインテリア

築50年小さな家の間取りとインテリア



全体面積も20坪に満たない小さな住まいです。それぞれの部屋も6帖とか8帖なので広いわけではありません。それでも、窮屈さはなく、家族との程よい距離感と、開放感さえ感じます。下側が南側ですが広い庭が広がっています。窓には障子をつけていますが、和紙越しに入る庭からの光は何ともやさしくて気持ちいい。締めっぱなしでも窮屈さは感じません。障子マジックですね。男子部屋も女子部屋も同じ6帖をそれぞれ二人でシェアしています。一人3帖の計算ですが、これはぼくが新築を計画する時の常数です。子供部屋の広さとしては最も効率的であり、落ち着ける広さだと考えています。一人6帖が当たり前の時代ですが、数年経てば無用の部屋になってしまいます。うちの男子部屋も、ひょっとしたら今年独り部屋になるかもしれません。広く使えている原因としてもう一つ、居間と寝室を兼ねているところでしょう。布団を敷けば寝室だし、しまってしまえば居間へと変身します。食堂は別にあるので、これで十分です。布団の上げ下ろしさえ怠らなければバッチリです。食堂と流し・食器棚などの収納との距離感もちょうどいい。椅子に座ったままでも手が届き、配膳も食事の支度も効率的です。まぁ、お風呂と洗面所トイレは手を付けると大事だったので何にもしていません。でもやっぱりお風呂寒いので、窓廻りの断熱化計画中です。窓さえ整えれば冷気の移動が少なくなり実温ほどの寒さは感じなくなるはずです。

冬の4カ月を暮らしてみて

最も寒いこの時期でさえ光熱費は前の住まいより安くなっています。実際、体感温度も上がっていて、朝の冷え込みもさほど苦にならないくらいです。屋根にも壁にも、もちろん窓についても無断熱の家ですが、なぜかあまり寒さを感じませんでした。おそらく、白い障子戸の明かりによる視覚的効果と、柔らかいスギの床板による触覚的効果、それと面積が小さい・室内ボリュームの少なさによる高効率効果がこの体感を実現しているのではと思います。これまで、私がお勧めする住宅として、小さな家というのは最大ポイントでした。実際お住まいになった方々からもいいご感想を頂いてきました。しかし、この家に越してきて実際に6人家族で暮らしてみて、あらためて小さな家の良さを実感しました。

6人で20坪というのは、うちの家族だからできたことかもしれません。しかし、そこで見いだしたルールを利用すれば、もっともっと小さい家の可能性は広がっていくのではと思います。小さくても豊かに暮らせる家、今後もその探求は進めていきます。